舌の役割と病気
投稿日:2025年2月6日
カテゴリ:スタッフブログ
舌は咀嚼、嚥下、発音におおきな働きをしますが、味覚や知覚を感じる受容器でもあります。
胃に入る食べ物の選別や食べ物を喉の奥(咽頭)へと移動し飲み込む動作(嚥下)を促し、咀嚼時には唾液の分泌も促すため消化を助けます。
嚥下の働きが低下すると咽頭へ食べ物をうまく送り込めずに誤嚥のリスクが高まります。
私たちの食事や話しをするために欠かせない重要な器官である舌。日頃から舌を観察してお口や身体の健康を守りましょう。
今回は舌の病気や異常についてお話をしたいと思います。
《舌の役割》
◎味覚を感じる
舌には味蕾という味覚を感じるセンサーがあり甘味、酸味、塩味、苦味を舌の決まった場所で感じています。
◎嚥下を助ける
先に述べたように舌は食べ物を喉の奥の方へと移動する嚥下を助けています。
嚥下の機能低下により、誤嚥性肺炎のリスクが上がります。令和元年の死亡原因の中で誤嚥性肺炎は2.9%で6位になっています。また、睡眠時に舌筋がゆるみ舌が沈下すると咽頭を塞ぐ状態になり無呼吸状態が起こります。これが睡眠時無呼吸症候群(SAS)です。
◎発音
口蓋と舌の位置により発音が決まります。
肺から息を出し、喉仏にある声帯を震わせて声を作ります。舌の形を変えたり、口を動かすことで、思い通りの音を作ります。この音を作る過程を「発音」と呼びます。
舌の位置が正しくないと正しい発音ができずに滑舌の悪さにつながるため、円滑なコミュニケーションにも影響が出ます。
《舌の病気や症状》
◎舌苔
舌の表面に付着する白い苔状のものです。薄いものは正常ですが、厚くなると菌の温床となり口臭や誤嚥性肺炎を誘因する可能性があります。
◎口腔カンジダ症
カンジタ菌により白い膜(白苔)で覆われたり、びらん(ただれ)や痛みが出ます。
口腔カンジダ症が慢性化すると肥厚性カンジダ症に進行して白苔は落ちにくくなり上皮の厚みが増します。
◎地図状舌
舌面の一部に赤色の滑らかな部分が生じ、白い境界線で囲まれています。触れるとヒリヒリ痛みが出る、しみるといった症状が出ていない場合は治療の対象にはなりません。
◎溝状舌
舌の表面に深い溝が形成され、左右対称に生じます。
先天性溝状舌と後天性溝状舌に分けられており、ほとんどが先天性です。
◎舌痛症
中高年の女性に多くみられ、舌の痛みがあるにもかかわらず、原因を特定できない状態を指します。原因不明とされていますが、近年の研究で心理的要因やホルモンバランスの変化が関与していると言われています。
◎白板症
歯肉、頬粘膜、舌下の粘膜、口蓋にできる擦っても取れない白斑です。放置すると口腔がんになる可能性があり、白板症の約10%が癌化すると言われています。
◎毛舌
体内のタンパク質が舌の表面にある突起に蓄積し毛のように見えます。味覚の変化が生じたり、口臭が強くなることもあります。
体に悪影響を及ぼす状態ではないため、口腔内の衛生環境を清潔に保つことが大切です。
◎毛様白板症
ほとんどが無症状で白い縦状のシワが舌の側面などに発生します。HIV感染者の口腔内に見られることが多く、毛舌と混同しない様に気を付けたい病気です。
◎舌がん
口の中にできる口腔がんの約60%を舌がんが占めています。60代男性に多くみられるのが特徴で、舌の縁にできやすく、初期症状はただれ、赤色や白色の部分が発生し口内炎の様な症状がでます。
進行するとしこりになり、膨らみやくぼみができて発声のしづらさや物を飲み込みにくくなるなどの舌の動きが悪くなります。
舌の病気や異常についてご説明しましたが、症状や治療の必要性は様々です。
小さい変化にも気がつく様に日頃からご自身で舌の状態を観察すること、かかりつけ医で定期的に健診をおこない、早期発見早期治療につなげることが重要です。
舌について心配事や疑問がありましたら、さいたま市中央区 伊藤歯科医院にご連絡ください。
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