歯科治療における偶発症について(血管迷走神経反射)
投稿日:2023年9月20日
カテゴリ:スタッフブログ
こんにちは。
今回は歯を抜く処置をした際に起こりうるお身体の異常(偶発症)についてお話ししていきたいと思います。
まずは、血管迷走神経反射と呼ばれる症状についてお話ししていきます。
血管迷走神経反射は、デンタルショック、神経性ショック、脳貧血様発作などと表現される状態で、歯科処置時における全身偶発症のなかでもっとも発生確率が高いとされる。歯科処置における全身偶発症のうち約60パーセントを占めるとされています。
なぜ血管迷走神経反射が起きるのか?というと、歯科処置にたいしての不安、緊張、恐怖といった精神的ストレスに加えて、痛み刺激による身体的ストレスが加わることで交感神経の作用で血圧の上昇、脈が早くなるといった状態になる。身体はこの交感神経の作用を抑えようとして副交感神経が働き血管を下げ、脈を遅くしようとする。この交感神経と副交感神経の働きにより生体の恒常性は保たれるが、バランスが崩れて副交感神経の作用が強く出てしまうと、血管迷走神経反射となり血圧が下がり、脈が遅くなり過ぎてしまう状態になる。
次に血管迷走神経反射の症状についてお話ししていきます。
先ほどもお話ししたように、副交感神経の作用が強く出過ぎたことで、血圧の低下と脈拍の低下が起きます。そのため、顔面蒼白、気分不良、吐き気、冷や汗といった症状を引き起こします。また脳への血流が一時的に減少することで意識を失う(失神)こともあります。
次に血管迷走神経反射の対応法についてお話ししていきます。
歯科処置時に気分不良を訴えた場合、まずモニターをつけて血圧や脈などバイタルサインを測定します。そこから血管迷走神経反射の可能性がある場合は、まず患者様が座っているユニット(チェア)を地面と平行になるまで倒して両足を上に持ち上げます。基本的にはほとんどの血管迷走神経反射はこの対応法で回復します。
次に血管迷走神経反射の発生タイミングについてお話ししていきます。
歯科処置時の全身偶発症のうち約60パーセントを占めますが、疼痛性ショック、神経性ショックとよばれることから、不安や緊張を感じているところに痛みを感じると起きやすいと言われます。そのようなタイミングとして最も多い状況は、処置前の局所麻酔があげられます。
血管迷走神経反射含め、局所麻酔のタイミングが最も全身偶発症が起こりやすいので、問診表に麻酔で気分が悪くなったかどうかの記載があります。
最後に血管迷走神経反射を起こしにくくする対策についてお話しします。
血管迷走神経反射の原因は精神的ストレス(不安、緊張)と身体的ストレス(痛み)なので、それらを感じにくくするのが一番の対策になります。具体的には、なるべく痛くない麻酔になります。
長くなりましたが、以上で終わりになります。
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